昨日、静岡県議会にて 浜岡原発の再稼働の是非を問う県民投票条例案が原案および修正案ともに否決されました。
東日本大震災後、原発立地県で初となる住民投票は実現しませんでした。
昨日はJA
全国農業協同組合中央会が「将来的な脱原発に向けた取り組みを実践する」とする決議を採択したことが話題になりましたが、
静岡県議会本会議の採決を前に、「原発県民投票静岡農業受任者の会」のメンバーが、県議会の各会派に県民投票の実現を求めて要望書を提出していました。
要望書では、「
福島第1原発事故では本県のお茶も汚染された。浜岡原発で事故が起こったとき、他の地域に迷惑をかけたくない」とした上で、「
直接一人一人が決定に参加できる住民投票制度を県議に重く受け止めていただきたい」と訴えている。
『県議会に要望書提出 農業受任者の会 静岡』2012.10.10 産経新聞
提出後、メンバーの一人で藤枝市の
茶農家杵塚歩さん(33)は「
原発事故で風評被害も深刻。県の中で広く自分たちの未来を議論していく場をつくりたいという気持ちを、県議にも理解してほしい」と訴えました。
『浜岡投票条例修正案 あす提案・採決』2012年10月10日 中日新聞 静岡
都民投票条例では、
本会議場での起立による採決でしたが、
静岡県議会の議会運営委員会は、原案、修正案ともに「
無記名投票」とすることを決めました。
これは、
自民改革会議に所属する議員30人からの要求で決まったそうです。
『原発住民投票 「署名者の賛意、反映なし」』2012年10月11日 読売新聞 静岡
条例案を提案した
川勝平太知事は、「
県議一人一人の意見を県民に伝える義務がある」として記名投票を求めていたそうです。
県議会事務局によると、
出席議員の5分の1以上の議員が
「投票による表決要求書」に署名し議長に提出することで、投票方法を要求できるということで、自民改革会議(37)所属の県議30人が無記名投票を求める要求書に署名し提出しましたが、
記名投票を求める要求書は提出されなかったそうです。
『浜岡原発:住民投票条例案の採決は無記名投票 県議会議運で決定 /静岡』毎日新聞 2012年10月11日 地方版
本会議での採決の結果は、委員会で原案が否決されたのを受け一部議員が提出した修正案を
反対48、賛成17で否決。
原案も全会一致で否決。
東京電力福島第1原発事故後の原発再稼働をめぐる初の住民投票は、立地県で16万人以上の署名を集めながら実施されないこととなりました。
議席の過半数を占める自民党系会派「自民改革会議」は原案と修正案の双方に反対していました。
原発稼働がテーマの住民投票条例案としては大阪市議会、東京都議会に次ぐ否決。
このニュースは静岡だけでなく、各地の新聞にも掲載されました。
『浜岡原発再稼働の県民投票否決 静岡県議会』2012年10月11日 沖縄タイムス
『浜岡県民投票実施せず 静岡県議会、修正案否決』2012年10月11日 北海道新聞
また、東京でも読めるものとしては、朝日新聞、そして東京新聞にも掲載されていました。


『浜岡原発の住民投票条例案を否決 静岡県議会』2012年10月12日 朝日新聞
都議会では、民主・共産・ネットが共同提出した修正案は総務委員会で否決され、最終本会議の採決にはかけられませんでした。
中部電力浜岡原発(御前崎市佐倉)の再稼働の是非を問う県民投票条例案については、総務委員会では原案のみを審議・採決し、
非自民系会派の議員有志が県が指摘した不備を見直した修正案は最終本会議に提出されました。
修正案は、不備の見直しに加えて、
投票資格は満18歳以上から満20歳に引き上げ、投票時期は原発の安全対策完了後、国が再稼働の検討を始めたと知事が判断した時などとしたそうです。
修正案に名前を連ねた議員は下記11名です。(敬称略)
【民主党・ふじのくに県議団(7/20)】
阿部卓也、
池谷晴一、
源馬謙太郎、
小長井由雄、
佐野愛子、
田内浩之、
四本康久【公明党県議団(1/5)】
前林孝一良【みんなの党・無所属クラブ(1/2)】
柏木健【富士の会(2/2)】
中沢通訓、
山本貴史『修正案提出を報告 非自民系11人』2012年10月10日 読売新聞 静岡
都議会でも、
本会議の最終採決の前に、各会派からの討論が行われました。
静岡県議会では、
宮沢正美氏(自民改革会議)が
原案と修正案のいずれにも反対の立場で討論を行い、
原子力行政は国の権能であり、
修正案は目的など大幅に変わり請求者の意思と異なるなどとした。
修正案に対する賛成討論では、
山本貴史氏(富士の会)と
高田好浩氏(公明党県議団)が
民意を反映する必要性などを訴えた。
『浜岡県民投票条例案 県議会が修正案、原案とも否決』(2012/10/11 14:30)静岡新聞
同じく討論内容について。
最大会派で過半数を占める自民党会派の自民改革会議は「
国策である原発再稼働の是非を県の住民投票で問うのは妥当ではない」と両案に反対討論。
修正案に賛同する公明党県議団などは「
原案の不備を理由に門前払いはできない」と修正案に賛成討論した。
『浜岡投票条例 県議会が否決』2012年10月12日 中日新聞 静岡
民主党の半数以上の議員が反対した理由としては、
条例案の不備や
中部電の安全対策工事が終わっていないことなどがあったようです。
『浜岡原発再稼働巡る住民投票条例案を否決 静岡県議会』2012/10/11 日本経済新聞
地方版ではより詳しく、討論内容について触れています。
最大会派「自民改革会議」(37人)の宮沢正美県議は「原案は
法制度上の不備が多く、たとえ
可決しても実現は不可能、
そもそも再稼働の是非を県民投票で問うのは妥当でない。修正案についても、
大幅に修正されており、請求者の意思に沿わない」と、原案、修正案ともに反対する意見を述べた。
「富士の会」(2人)は、法制度上の不備の多さから原案に反対し、修正案は「
原案で問題とされた箇所について適切に修正されている」として賛成した。
「公明党県議団」(5人)も同様に原案に反対、修正案に賛成する考えを示した。
「民主党・ふじのくに県議団」(20人)と「みんなの党・無所属クラブ」(2人)は
会派としての意見を示さなかった。
最終的に
修正案に賛成したのは
17名の議員でした。
都民投票条例案への各都議の賛否は新聞各紙にも取り上げられましたが、
今回の静岡県議会では無記名投票が採用されたため、各議員の賛否は不明です。
読売新聞によると、
修正案に対する賛否について、
自民改革会議は所属議員に党議拘束をかけなかったが、11日朝の会合で、
会派として否決する方針を確認したそうです。
一方、民主党・ふじのくに県議団は同日朝の議員総会で「自主投票」とすることを決めたそうです。
そこで、賛成17人の内訳について、民9、公5、み1、富2と予想しているようです。
条例案を巡っては、民主党・ふじのくに県議団や公明党県議団などの
11人が修正案を提出、
公明党県議団の残り4人が採決前に賛意を表明し、少なくとも計15人が賛意を表明していたが、
これ以外に賛成した議員は2人にとどまった。
採決前に明確に賛否を明らかにしていなかった
民主党・ふじのくに県議団の議員らが賛成したとみられる。
修正案作成の中心となった
池谷晴一県議(民主党・ふじのくに県議団)は
「16万人の意思に沿えなかったのは残念だ」と肩を落とした。
修正案の提出者となった
中沢通訓県議(富士の会)は
「請求代表者は『条例の目的と手段が確保できれば構わない』と言っており、反対のための材料を探しただけだ」と、修正案に反対した自民改革会議を批判しました。
『原発住民投票 実施されず』2012年10月12日 読売新聞 静岡
否決後の市民団体側および川勝知事のコメントです。
修正条例案は総務委員会にはかられることもなく、実質的な議論がないままに否決されたことについて、
署名を集めた市民団体は「暗澹(あんたん)たる気持ちだ。県民に分かる議論ではない」と憤った。
約16万5千人分の署名を添えて住民投票条例の制定を直接請求した「原発県民投票静岡」の鈴木望共同代表は、
否決されたことについて、「条例案の不備問題が尾を引き、総務委員会にも修正案が出ず、本質的な議論はなかった」と話す。
さらに「
条例案は完全である必要はなく、不完全な場合は議会の修正で足りる」と記された
県自治行政課のマニュアルを示し、「
条例案が実現不可能ならば県議会が修正するということだ」と主張した。
県議会には「住民投票をしたいという思いが、なぜ否決されなければならないのか。否決理由は説得性を持たない」「住民投票という権利そのものを侵害された」などと憤った。
川勝平太知事は、原発の是非の判断に住民投票がふさわしいかどうかについては「
浜岡原発について一番よく知っている我々(県民)が、意思表明をする機会があっていい」とした。
『「本質的議論なかった」/原発住民投票否決』2012年10月12日 朝日新聞 静岡
今回、市民側が提出した条例案は「不備のある条例案」として、知事や議会から批判を浴び続けました。
そもそも、市民が「案」として提出するものに、完全で不備のないものが求められているのでしょうか?
市民から「たとえばこのような条例を作ってほしい」という訴えがあり、
その声に耳を傾け、本質的な願いを理解し、立法の専門家としてよりよく実現するための修正を加える。
私には、それが「ふつう」のことのように思えます。
一切議会からの修正など受け付けない という姿勢で条例案を提出する方が、「議会軽視」の姿勢に感じます。
市民と議会が対話を重ねて、よりよい社会を作っていけばよいのではないでしょうか。
川勝平太知事は、「(
自民改革会議が)『修正案は修正ではなく、あまりに中身が違って全面改定だ』とし否決したのはややへりくつだ」と述べ、原案と中身との違いを理由に反対した最大会派の主張を「入り口論」と批判したそうです。
また、有志県議らの
修正案を「
大変立派なもので、今後直接請求する際のモデルとなった。県外などに情報発信して生かしていくことができると思う」と評価し、
他方で、市民団体に対し「条例案の問題点を指摘したにもかかわらず、(不備を認めるなど)謙虚な姿勢でいなかったことが否決の原因」と苦言を呈したそうです。
『浜岡原発:県民投票条例案否決 16万人の声届かず 与党も態度割れ /静岡』毎日新聞 2012年10月12日 地方版
また、川勝平太知事は「修正案は入り口論で否決され、中身が問題とは思わない。県民投票に弾みがついた」とし、
浜岡原発の安全対策や県民への情報提供などの条件が整った場合の
県民投票実現に前向きな姿勢を示しました。
知事は修正案を「県民投票する場合の基準になる案が手元にできた。(浜岡原発の)安全性を検証し、県民に情報提供した上で仕切り直しの余地はある」とし、
将来的な知事提案に含みを持たせた。
『【浜岡県民投票否決】知事、修正案再提出を示唆』(2012/10/12 07:34)静岡新聞
静岡県民投票について社説を出している新聞もありました。
ぜひ、お読みください。
『「浜岡」住民投票 民意の出番つぶされた』2012年10月12日 東京新聞 社説
『再稼働の是非 民意くみ取る道筋示せ』2012年10月12日 信濃毎日新聞 社説
条例案の否決を受けた各会派のコメントは以下の通り。
◇考え反映された−−
自民改革会議の
中谷多加二代表
会派の考えが反映された結果でよかった。大勢が同じ方向を向いていることが分かった。
◇結果は受け止める−−
民主党・ふじのくに県議団の
野沢義雄会長
結果は受け止めるしかない。修正案の質疑があった方がよかった。
◇賛同者ほしかった−−公明党県議団の前林孝一良代表
もっと賛同者がほしかった。修正案を出すことで県民の気持ちに添うことはできた。
◇終わりではない−−みんなの党・無所属クラブの遠藤行洋共同代表
真剣に議論した。条例案が否決されたが、これで終わりではない。
◇今後が問われる−−富士の会の中沢通訓代表
趣旨が合っていれば改正も問題ない。住民運動や議会活動もこの結果を受けどうするかが問われる。
『浜岡原発:県民投票条例案否決 各会派のコメント /静岡』また浜岡原発から10キロ圏にある地元4市の市長がコメントを発表しました。
◇脱原発依存目指す−−菊川市の
太田順一市長
県議会の判断にかかわらず、「原発に依存しない社会」の実現に向け取り組んでいく。
◇国がビジョンを−−御前崎市の
石原茂雄市長
県議会の判断が出た以上、尊重したい。国がしっかりと(原子力政策の)ビジョンを示すべきだ。
◇安全対策が重要−−掛川市の
松井三郎市長
否決は条例案に法制度上の不備などがあったのが要因。地震・津波に対する安全対策を早期に実施することが重要だ。
◇再稼働是非判断を−−牧之原市の
西原茂樹市長
県民投票を求めた皆さんの願いが実現しなかったことは残念。県議会は、再稼働の是非に関し早急に判断を示してほしい。
『浜岡原発:県民投票条例案否決 地元4市長のコメント /静岡』毎日新聞 2012年10月12日 地方版
ちなみに、東京都議会平成24年度第2回定例会と同様、
静岡県議会平成24年9月定例会にて審議された議案のうち、「否決」されたものは、
第133号 中部電力浜岡原子力発電所の再稼動の是非を問う県民投票条例について 一件のみです。
動画ニュース
『浜岡原発、住民投票案を否決~静岡県議会』読売テレビ
『原発再稼働問う住民投票条例案 採決(静岡県)』静岡第一テレビ
『16万人の声届かず…浜岡再稼働巡る住民投票否決』テレ朝ニュース
【よこっち】
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