「原発」都民投票の会主催イベント報告
住民投票ワークショップを受けて
2018年6月28日に開催した住民投票ワークショップイベントで、最大の議論のポイントは、住民投票広報協議会の在り方についての議論だった。講師の南部先生からは、憲法改正のための国民投票法における広報協議会の在り方についても詳しい解説があった。私たち当会役員メンバーなどが住民投票条例上の広報協議会について関心を示したのは、2012年に行われた原発新潟県民投票直接請求活動におけるその直接請求条例原案に、広報協議会についての規定が盛り込まれていたからである。
憲法改正国民投票法の広報協議会の規定と、住民投票条例上の同規定との最大の違いは、国民投票法においては憲法改正についての一切の手続きは立法府である国会の専管と規定されていることに対し、住民投票条例については明文化した規定がない場合がほとんどなことである。このことについて南部先生からは、地方自治法上の「執行機関の附属機関」(同法138条4の3や同法202条3の1)という規定を引き合いに、住民投票条例上の広報機関をめぐる法制度上の背景についての解説があった。
国民投票法、住民投票条例、いずれの場合でも広報協議会の在り方について、その公平性がいかに担保されるかということが最も重要であることはいうまでもない。それは、政治主導による政治的意思決定における公正さがいかに担保されるかということに関係する。制度の違いからくる公平さや公正さを担保する仕組みの在り方についての議論は、国民投票法が国政に関することで、住民投票条例が地方自治に関することの違いにとどまらない。もっと一般的に言い換えると、間接代議かつ内閣制という立法システムと二元代表制という立法システムそれぞれについて望ましい担保の仕組みについての議論が求められる。1999年の地方自治法の改正により機関委任事務が廃止されたり、同時に制定された地方分権一括法により、国と地方の関係は主従関係ではなく対等であると規定された。法制度上の公平性や公正性を担保する仕組みの在り方をめぐる議論において、国の方が地方より、より厳格でなければならないということも、その逆もあってはならない。
私たちは、住民投票条例制定直接請求活動のその条例原案のひな型を作ることをめざし、住民投票条例における広報協議会の在り方の議論を通じて、住民投票実施告知における公平さの仕組みがいかに担保されるかという問題意識を共有するに至った。先のワークショップで議論となったことは、広報協議会を担うのは、執行機関の附属機関が望ましいのか、議会が望ましいのかという点であった。発議の方法が三通りある住民投票条例について、執行機関の附属機関や議会も絡む形で、どのような広報協議会の制度設計が望ましいのか、個々実際の直接請求活動それぞれでの議論が求められる。また、先にも言及したように、国民投票法でその広報の役割を担うのは国会であるが、憲法改正推進派と反対派の間で著しい偏りを生じる国会議員構成において、国会が広報協議会を担うことについて、公平さを担保する上で支障が出ないのか疑問があったが、国会法における特別多数決という議決の仕組みがとられるため、公平性は担保されると南部先生から解説があったところである。
日本国において市民は条例と言う公的規則は作れるが、法律と言う公的規則は作れない。日本国憲法上、法律を作ったり改正したりできるのは国会議員だけである。だからそれゆえ、政治的意思形成における公平性や公正さを担保する仕組みの在り方について、国会議員のほうでこそがより真剣で厳密な議論が求められるのはいうまでもない。しかし、その議論を国会の場にだけゆだねるだけで十分であるとは全く思えない。それでは何も変わらないだろう。市民一人一人が、政治的に公正で公平な政治的意思形成の在り方について考えたり議論をする場や機会を得ることが必要である。住民投票条例制定の直接請求活動はそうした場や機会を提供する。住民投票条例制定の直接請求活動は、反対運動ではない。あくまでも賛成や反対などの住民意思を問うための条例制定直接請求という準備活動である。また、この活動は特定の候補のために行う選挙活動とも全く異なる。住民投票条例制定の直接請求活動こそが、最も身近に、政治的意思形成の公平性や公正性について考える場を提供するものとなろう。
今、沖縄県内で辺野古新基地の建設をめぐって、都道府県レベルでは唯一となる大規模な直接請求活動が取り組まれている。また辺野古新基地をめぐる問題について、政治的に公平で公正な意思形成をきすことについても、沖縄からの強い告発と発信をまちたい。
南部義典さんのお話⇨
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